リチャード・プライス 氏に聞く 2024/6
―パーティクル・パル開発の背景
弊社のパーティクル・パルシリーズ(写真3)は,持ち運び可能なオイル清浄度のモニタリング技術を大幅に変革しました.当初弊社ではレーザー方式のFS9V2パーティクルカウンターを導入し,これらのデバイスはすぐに様々な産業分野の油圧および潤滑システムの清浄度を維持するために不可欠となりました.しかし,初期モデルのレーザー光遮断式自動粒子計数方式は,革新的であったものの,実際の粒子系汚染物質と気泡/消泡剤などの幻影粒子を区別できないため清浄度の評価があまり正確ではありませんでした.
―パーティクル・パル技術のその後の進化
レーザー技術の欠点に対応するため,英国で受賞歴のあるパーティクル・パル プロ(FS9V3)を導入しました.このモデルはデジタル画像解析方式のパーティクルカウンターを組み込むことで,大きな進歩を遂げました.高解像度CMOSセンサーカメラと形状認識可能な洗練されたアルゴリズムを使用し,モデルFS9V3は異なる形状の汚染物質を正確に区別,以前のレーザーカウンターによる誤認識の問題を効果的に解決しました.
FS9V3はTANデルタ・オイル寿命センサーがオプション選択でき,その機能を大幅に強化しています.このセンサーは,包括的なオイルコンディションモニタリングが可能となる予知保全に不可欠な技術です.また,FS9V3は長時間のデータログを機能させ,傾向管理を容易にし,潜在的な故障を事前に予測するのに役立ちます.要求の厳しい用途向けに設計されており,2400cStまでの粘度のオイルをテストできるため,厳しい環境に欠かせない測定分析ツールです.
―次に発売されたパーティクル・パル プラスモデル(FS9V4)の特長
プロモデル(FS9V3)の成功を受け,パーティクルパル プラス(FS9V4)を2023年に導入しました.このモデルはより小型の筐体で設計されており,コンパクトなTFT液晶タッチスクリーンを特長としています.プロモデルとは異なり,プラスモデル(FS9V4)にはTANデルタ・オイル寿命センサーが含まれていません.特に詳細なコンディションモニタリングやデータログがそれほど重要ではないアプリケーションに適した,より経済的な選択肢として位置づけられています.
プラスモデルは,デバイスによって生成されるQRコードが発行でき,クラウドサービスとリンクされます.このQRコードをスキャンすると,保存された最新5回の測定データがアップロードされます.この機能により,ユーザーはQRコードをスキャンするだけで包括的な清浄度PDFレポートを生成できます.レポートは専用クラウドプラットフォームを介してモバイルユニット(スマホ・タブレット)で即座にアクセスでき,データの詳細な閲覧と,保存して取り出すことも可能です.この機能は,迅速かつ容易にデータへアクセスする必要がある現場条件で便利に活用できます.プロモデルと比較して分析範囲は限られていますが,プラスモデルは必要なサービスを効果的かつ効率的に提供します.
―パーティクル・パル プラスに最近導入された機能
最終的には,「ラボ・イン・ボックス」としての製品展開を目指しています.この目標に向けて,自己校正可能な鉄粉濃度センサー(オプション)がパーティクル・パル プロの高粘度(HV)バージョンに追加されました.0から2000PPMの強磁性金属粒子の検出により,故障予防と摩耗監視が可能になり,パーティクル・パル プラスはさらに強力なオイル寿命モニタリングと原因分析ソリューションが機能追加されました.
―国際的な評価とその機能
海外での販売も好調です.多くの代理店を通じて国内,海外需要を拡大しています.世界的な消費者への期待に応えるサプライヤーや油圧メーカーからの信頼が厚いことからも国際的な評価が認められているものと思います.
パーティクル・パルは,持ち運び可能なラボ品質の分析ユニットへの顕著な進歩を続けています.基本的な粒子系コンタミの計測に加え,オプション機能として,飽和水分/粘度/密度の測定と,併せて鉄粉濃度を測定するためのセンサーを追加しました.これにより,かつては設備が整ったラボでしかできなかった包括的な分析が現場で実施可能となりました.この進化は,フィルターテクニック社の持ち運び可能なポータブル診断ツールの限界を広げ,現代の産業の複雑なニーズに応えることを目指しています.
パーティクル・パルシリーズは,特に厳しい運用条件にさらされる設備がある様々な産業において,メンテナンス実行性の革新に寄与しています.これらのデバイスは,現場でのオイル分析を可能にし,運用効率を向上し設備の稼働率を改善させ,メンテナンスコストを削減することに役立っています.これは,時間を要する旧来的なラボベースの分析に依存する必要性を大幅に減少させることで,時短とコスト削減にも貢献しています.
今後,フィルターテクニック社はパーティクル・パルシリーズでの革新を続け,より高度な診断ツールとセンサーの統合に焦点を当て,将来はユーザーインタラクションの向上,追加の分析センサーの提供,より詳細でカスタマイズ可能なレポートの提供,様々な産業の特定ニーズに応えることを目指しています.
―環境および経済的な利点
パーティクル・パルシリーズの進歩は,環境持続可能性にも大きく寄与しています.正確なオイルの状態モニタリングを提供することで,不必要なオイル交換を最小限に抑え,廃油の処理量を減らすことに大きく役立ちます.これは環境保護だけでなく,オイル使用量を最適化,メンテナンス間隔を延長することによる経済的利益メリットをもたらします.
デジタル画像解析技術の精度は,添加剤を除く真の汚染物質のみが測定計数されることを保証します.この精度により粒子数の過大評価を防げ,早期のオイル交換を防ぎ,オイルがより長期間最適な性能レベルを維持することに役立ちます.この精度は,オイルメンテナンスに関連する環境への影響と運用コストを大きく削減することにもつながります.
―今後の展望
レーザー技術を使用した原点から,プロおよびプラスモデルの先進的なデジタル画像解析方式に至るまで,パーティクル・パルシリーズは産業界が油圧システムに依存する業界ニーズに応えるために進化し続けています.これらのデバイスは,フィルターテクニック社の革新,品質,信頼性へのコミットメントを示すものであり,産業機器メンテナンス,予測診断,環境持続可能性の確保に不可欠なツールとして位置づけられています.シリーズが進化を続けるにつれて,パーティクル・パルデバイスは,機械設備の健全性と運用効率を維持することを目指す産業にとって引き続き重要なツールとなります.
海外市場と比較すると,日本国内でのオイルパーティクルカウンターの販売市場はまだまだ大きくありません.今現在でも,測定装置を使用せず,時間の要するオイルメーカーでの分析依頼に依存して環境負荷の高いオイル交換による保全を行っている企業も少なくないのが実情です.最新技術により,環境負荷の少ない合理的なオイルメンテナンスを実施して,環境負荷低減と稼働率向上・コストダウンを同時に実現する社内分析を推奨いたします.
オイルサンプル500mLとSDSを送付いただけましたら,フィルターテクニック社ラボにて検証分析テストを無償にて実施いたしますので,下記日本国内代理店にお問い合わせください.
輸入販売元
株式会社チヒロ
〒168-0063 東京都杉並区和泉3-25-1
TEL 03-6304-7761
https://www.oil-particle-counter.jp
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