2023年9月18日（月）～23日（土）迄の6日間，ドイツ・ハノーバー国際見本市会場で，世界最大級の国際金属加工見本市「EMO Hannover 2023」（主催：ドイツ工作機械工業会（以下VDW）／ドイツメッセ）が開催される。
EMO Hannoverは，ドイツ・ハノーバーとイタリア・ミラノで交互に開催される工作機械の国際展示会。2019年以来4年振りにリアル開催となる今回は世界42ヵ国から1,750社を超える出展が見込まれ，日本からも70社が出展を予定する。（7/4現在）
今回のEmo Hannover 2023は「Innovate Manufacturing（製造業のイノベーション）」をテーマに掲げて，産業界が現在直面する新たな市場，新たなビジネスモデル，ビジネスチャンスに焦点を当てている。
VDWでは日本を含む40ヵ国でEmo Hannoverのワールドツアーを開催し，その魅力について紹介してきた。そのクライマックスとして開催を2ヵ月後に控えた7月5日（水）にドイツ・フランクフルト郊外のKlassikstadt（クラシックカー総合展示施設）にて開催概要や出展企業を代表し8ヵ国31社が見どころなどを紹介するプレスプレビューを開催，世界30ヵ国から約70名のジャーナリストが参加した。
VDWがみどころを紹介
当日はVDW広報担当責任者のSylke Becker 氏の司会進行で始まり主催者VDW Executive DirectorのDr. Wilfried Schäfer 氏とDr. Markus Heering 氏が見どころについて次のように紹介した。「Emo Hannoverのプレビューは，フランクフルト・アム・マインで初めての開催となる。このイベントはEMOワールドツアーのクライマックスであり締めくくりでもある。日本からメキシコ，フィンランドから南アフリカまで40ヵ国約60のイベントでEmo Hannover 2023を紹介してきた。
デジタル化やサステナビリティ，ノウハウの伝承，標準化といったトピックが注目されている。今回はイノベーション・マニュファクチュアリングを旗印に，『ビジネスの未来』，『コネクティビティの未来』，『生産における持続可能性の未来』の3つのメガトピックに焦点を当て技術ソリューションを展示する。マシニングセンタ，旋盤，切削工具とクランプ装置，測定機器，制御システムなど幅広い分野で効率の向上，AIの統合，工場全体の包括的なネットワーキングなど生産現場の課題を浮き彫りにし，積層造形，コネクティビティ，コボット，生産における持続可能性といったトレンドに注目している。また50社の若いスタートアップ企業の出展ブースでは，経験豊富な来場者や出展者との対話やマッチメーキングにより双方に学びがあり，新しい技術やイノベーションと産業の活性化や発展が始まることを期待している。
これまでEMOでは6000人の学生を会場に呼んで技術的な職場の魅力を知って貰う機会を作ってきた。今回は更に発展的に企業に呼び掛けてEラーニングや職業訓練の内容などを紹介する。
umati（universal machine technology interface）のスタンドでは，工場内や工場間の効果的なネットワーキングの基盤として，機械およびプラントエンジニアリング業界向けの持続イニシアチブの最新開発を紹介する大規模なライブデモンストレーションが行われる。またスタートアップのエリアでは若い企業との先駆的なコラボレーションを促進する。インド市場におけるビジネスチャンスに関するカンファレンスも予定している。
出展者と共に来場者も新たなテーマを会場に持ちより対話して欲しい。国際的なネットワークングなど知見を共有して欲しい。」とみどころと共にメッセージを語った。
次に基調講演では，VDWマネージングディレクターのDr. Alexander Broos 氏がumatiについて次のように紹介した。「umatiはオープンな世界的イニシアチブで機械製造業界とその顧客向けの通信インターフェースだ。マシンビルダー，ソフトウエアメーカー，コンポーネントサプライヤー，ユーザーが団結して強力なコミュニティを形成し同じ言語や辞書に基づいたオープンで標準化されたインターフェースの仕様を促進し機械同士の連携が図れる。
現在300を超える企業や研究機関（半数はドイツ国外）がumati コミュニティに参加し世界的に利用可能なデータエコシステムに取り組んでいる」と現状などを紹介した。
今回のEmo Hannoverではホール9にumatiブースを設置し，毎日数回専門家によるセッションを開催しumatiチームやパートナー企業の代表による機械工学向けのオープンで標準化されたデータインターフェースの背景，技術や利点などの情報を公開する。
またOPC FoundationとVDMAのMachine Information Interoperability（MII）部門のブースではOPC UAの強力な特徴として，ベーステクノロジーのVDMAによって駆動されるGlobal Production Languageが採用されている。会場では工作機械メーカーだけではなく，部品のサプライヤー，計測，積層造形，ロボット，画像処理やソフトウエアメーカーがすべてのデバイスのQRコード経由で接続され，デモンストレーションではすべての来場者がアプリケーションumati.appで稼働状況などを直接確認することができる。
出展企業を代表する31社による90秒スピーチと出展概要
出展企業を代表し8ヵ国から31社がステージで90秒スピーチとスタンドで商品のプレゼンテーションを行った。ここではDMG MORI，FLACO，igus，OKUMAを紹介する。
（https://event.dmgmori.com/en/events/emo-2023）
DMG MORIでは，製造業の未来を定義する革新的なテクノロジーとソリューションで構成される新しいマシニング・トランスフォーメーション・フレームワーク「Home of Technology」を公開する。会場の「DMG MORI City」では，「マシニング・トランスフォーメーション（MX）」を集中的に紹介する。プロセス統合，自動化，デジタルトランスフォーメーション（DX），グリーントランスフォーメーション（GX）というMXの4つの柱に基づき，製造業の未来を決定づける革新的なテクノロジーとソリューションを実演する。約9,000m²の「DMG MORI City」では，ユニバーサル旋盤，プロダクション旋盤から5軸マシニングセンタ，ターニング／フライス盤，積層造形まであらゆる技術分野の総合的な生産コンセプトや最先端の工作機械を展示する。
（https://www.flaco.de/de/）
FLACOは75年以上にわたり，タンク技術，整備工場，工業分野で革新的で効率的な製品とシステムソリューションを提供している。
FLACO fluid PS-200は可搬型の作動油充填ユニット。強力な吸引ポンプで貯蔵タンクから大量の油を迅速に抽出し新油を充填できる。
FLACO MIXING＆DOSING SYSTEMSは，水溶性切削油を濃度管理しながらミキシングして工作機械に再充填できる可搬式オイル充填装置。水溶性切削油の混合充填装置「FLACO-KSS 200/60 pro」は，1～9％の濃度範囲で水溶性切削油を混合し，補充することが出来る。これにより品質と耐用年数を大幅に向上することができる。
（https://press.igus.eu/）
無潤滑プラスチックベアリングやエナジーチェーン，ケーブルを供給するモーション・プラスチックのigusでは2019年からメーカーに関係なく，顧客が使用しなくなったエナジーチェーンをリサイクルできるようにしてきた。2022年10月にはリサイクルへの簡単なデジタルアクセスを提供する「Chainge」オンラインプラットフォームが誕生した。またサーキュラースタートアップのcirplus社に出資し，再生プラスチックの製造販売に注力している。これによりエナジーチェーンのリサイクル販売比率が高まる一方で，ベアリングのリサイクル販売にも取り組んでいく。
初の3Dプリントによりミリ単位の精度で製造できるハーネス式エネルギー供給システム用のモジュラー式組立・搬送ラック「readychainラック」や新しいオンラインツールによりユーザーはCADの知識がなくてもロボットの作業環境を素早く設計ができる「RBTX Machine Planner」。ロボットソリューション全体をわずか1分で設計できるマシンプランナーを紹介する。
また新たな技法として，顧客はバーチャル・リアリティ・グラスをかけることで高性能のイグスモーションプラスチックを搭載したミニバンの3Dモデルを鑑賞することができる。パンフレットやパワーポイントによる体験よりもバーチャルリアリティにより記憶に残りやすい新しいプレゼンテーション，販売エンジニアリングの方法も紹介する。
（https://www.okuma.eu/）
創業125周年を迎えるコンピュータ数値制御（CNC）工作機械で知られるOKUMAは長年にわたり環境に配慮した省エネソリューションに取り組んでいる。今回，製造業における最適な精度と効率を維持しながらエネルギー使用量を大幅に削減出来る「Green Smart Machines」を開発した。
自社開発のサーモフレンドリーコンセプトは，温度変動を補正し，長期連続運転で優れた寸法安定性を実現し機械を温める必要がなくエネルギーコストが節約できる。ECOスイートプラスは，非効率なポンプ回転の調整，分散型機器の連続運転の監視，CO₂排出量の記録など自律的な省エネ機能を搭載。また主軸冷却システムの運転制御技術により精度の安定性とエネルギーの最小化によりエネルギー消費量が最大で1.5％削減できる。
次世代CNC制御装置の新型OSP-P500にはサイバー攻撃に対する安全機能や複雑な加工をより高精度に，より短時間で実現できることで生産工程の自動化・省エネルギー化が実現できる。また「デジタルツイン」が搭載され生産工程のスピードアップと準備時間が短縮できる。
「スマートOSPオペレーション」機能は，操作を簡素化し必要なすべてのステップを自動ガイダンスすることで経験の浅いユーザーでも1日でワークの加工方法を習得できる。
